人工心臓弁とは

人工心臓弁(Cardiac Valve Prostheses)とは、心臓弁の機能が十分に果たせなくなってしまう「心臓弁膜症」となった場合、手術により心臓弁を修復(心臓弁形成術)することで、再び元通りの機能が果たせない場合には、心臓弁を切り取り、機能を代替する心臓弁となるもので、特殊なカーボンでできた機械弁とウシやブタの組織を化学処理した生体弁とがあります。
小児、若年者では生体弁劣化が早く、再手術の可能性が高まるため機械弁が絶対的に有利であり、年令を問わず再手術自体のリスクが高い患者でも機械弁が選択されます。
弁置換手術を受ける患者に対する弁の選択はおおむね、ワーファリン内服の安全性と再手術回避の可能性の2点のバランスで決定され、慢性の心房細動を有する患者ではいずれにせよワーファリン内服は必要となるため機械弁を選択することが多く、逆に若年でも将来出産を希望する女性では妊娠早期に催奇形性のあるワーファリンを内服しなくてもよい生体弁を選択します。
また、血栓塞栓症のリスクが高い患者や、出血合併症のリスクの高い患者では生体弁が有利です。
日本では数年前まで機械弁と生体弁の使用される比が9:1ほどでしたが、近年では新しい生体弁の普及で7:3ほどに変化しています。
在主流な機械弁は二葉弁といって、主にパイロライティックカーボンという材料でできた半月状の二枚の板が蝶の羽のように開閉する構造をしているタイプの弁です。
耐久性に関しては機械弁は優れていると言え、介在する事情がない限りどの年代の人でも一生涯保つと言われています。